【実話】出逢ったのはフィリピーナ。別れたのもフィリピーナ。

1994年フィリピーナとの出来事を当時の記憶のまま、お伝えして行きます。

今だから話せる事。忘れては行けない事。その教訓が現代に至る事。

12*マイからの電話

ローズ家の戦争

真夏で熱帯夜だったのを覚えています。

クーラーフル稼働で、ビール飲みながらテレビの深夜映画観るのが好きでした。

テレビの映画って、これしかやってないから仕方なく見るような感じで、自らその映画をみようなんて思わないものが殆どですが、たまに70年代や60年代の古臭い映画がやってたりすると、思わず見入っちゃう時もあり「あの映画騙されたと思ってみてみ」なんて、ネタ作りに最適でした。

 

確かその日は「ローズ家の戦争」 をやっていました。

この映画もレンタル店には人気作としてありましたが、夫婦間の話なんてあまり興味なくスルーしていた映画です。

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出典:ローズ家の戦争 : 作品情報 - 映画.com

 

(※ネタバレしますよ)

映画での弁護士役『ダニー・デピート』が監督した作品で、ことある事にタバコに火を付ける弁護士につられて自分もタバコに火を付けては、ぼ~と観ていました。

主役『マイケル・ダグラス』と『キャスリーン・ターナー』が恋人から夫婦となり、離婚問題を抱えて行く内容です。

 

 

【電話】

ちょうどクライマックスくらいの時に電話が鳴ったのです。

時間も時間だし、割と大音量に設定していたのでビクっとしました。

ホラー映画じゃなく良かった。

 

「もしもし」

「…」

「あれっ、もしもし?誰?」

イタ電かよっ。

「…タツ。もしもしー」

「ん?だれ?」

「もしもしー、おぼえ てるー?」

「…え?え? マイ?うん、覚えてる」

 

「そうマイです、おぼえ てるー?」

 

電話ボックスからでやたらと声が小さいのですが、声の主は間違いなくマイでした。

イントネーションも「覚えてる?」ではなく「おぼえ ↑・てる ↓」のマイの口調です。

 

「たつ、何してるの?」

「オレ?映画みてる」

「あ~。なにの映画?」

ローズ家の戦争

「なに?」

ローズ家の戦争!」

「ローソク?」

「違う!マイケル・ダグラスとキャスリーンターナーが夫婦の…」

「あ~ん…あっ! ”The War of the Roses”」

「う~ん、…そうかな?…ローズ家の戦争…」

 

マイと会話するのは実に半年ぶりでした。

なのにお互い「久しぶり」も「元気?」も言わない。

私の見ている映画をマイが当てるだけ。

シンフォニック時と変わらない会話。

「おぼえ てるー?」「うん、覚えてる」でこの半年間が全て埋まったような、充実感がありました。

 

【マイの用件】

「マイは今何してる?どこにいるの?」

こんな時間にわざわざ電話して来るのには何か意味があるのだろう。

「あのね、あたしね今、長野から帰ってきて新宿にいるの。でもう電車ないのでしょ?」

「長野?新宿?」

 

ま~、なんとなく半年前から今までのマイの行動が繋がってきた。

「ねぇ、タツ、お金貸して。今からタクシーであなたの駅まで行くから、お金持って迎えにきてください」

言い方は表現力が乏しく強引だけれど、スドーに頼らず私に連絡をしてきた事が何よりも嬉しく、記憶から消え去ったマイの復活こそ至福でした。

とにかく、マイを迎えに行こう。

 

当然の事ながら、以前アキをシンフォニックまで迎えに行った時とは全くモチベーションが違います。

マイがタクシーで到着するまで駅で待つ事さえ苦じゃなかったのですから。

 

ローズ家の戦争 エンディング】

夫婦喧嘩がエスカレートし、何かのきっかけで天井の照明に二人がぶら下がってしまい、重みで照明もろとも二人は落下してしまいます。

息絶えながらも、旦那さんは奥さんの肩に手を掛けますが、奥さんはその手を振り払ってしまうのです。

旦那さんは死ぬまで奥さんを愛していたのでしょうが、奥さんはそれを受け入れずにデッドエンドで終わるのです。

 

何故か後味悪さが感じさせないくらい、見ごたえ十分な映画でした。

 

(つづく)

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11*フィリピーナとのエピローグ

【エピローグ】

当時23歳だった私は、初めてフィリピンパブ『シンフォニック」へいった時に、小柄でショートカット、瞳の大きなフィリピーナ・マイに惚れてしまった事からこの物語が始まっていました。

 

マイが店を辞め、踏ん切り付けようと気持ちを入れ替えるつもりでしたが、マイを取り巻く周囲の動きや発言に踊らされ続け、二度と逢う可能性が少ないにも関わらず、僅かな『希望』を捨てられないままでした。

マイがどんな男と付き合おうが『絶対に奪ってやる。俺が死守してやる』と言う、ある意味<危険な妄想>も抱いていたのです。

 

仮にマイが店を辞めていなかったとしたら、執拗にマイに接近していた事でしょう。

そして、シンフォニック側はそんな私を『生かさず殺さず』な扱いをしたに違いありません。

 

また、色々な悩み等が募り気持ちが行き詰まると、癌を患った親友<健>のお見舞いに向かっていました。

私的にはお見舞いと言うより遊びに行く感覚で、健も『タツのように無神経なヤツはムカツクけど病気の事忘れるくらいだからマシ』と伝えてきていました。

 

【急展開】

ところがですね、マイが辞めてから丁度半年くらい経った頃だったと思います。

シンフォニックも、マイも、アキも、ミサも、そしてスドーも記憶からなくなりかけてた時でした。

事態は急展開したのです。

 

ここまでの話はただの『エピローグ』でした。

 

何が起こったのかと言いますと、

ある日の深夜、

マイから電話がありました。

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(つづく)

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10*マイとスドー

【ノルマ】
ミサからの情報もありマイの男スドーを確認したく、久しぶりにシンフォニックへ行きました。
粗満席で賑わっていてスドーが誰なのか見当着かない状態。

別に喧嘩売るつもりはないし、一方的に惚れた女の何の面識もない男に、面と向かって用はなく、ただ単に興味本意と、もしかしたらスドーと会話して、マイの事も聞けるかも知れない。

 

聞いてどうなる…?

どうにもならないね。

自問自答を繰り返していました。

 

「お久しぶりで~す」
と、しらじらしく挨拶して横に座ったミサ。
「いいよ。好きなの飲んで」
「金ないんでしょ?一杯だけ頂きます!」
「どうぞ。どうぞ。」

乾杯するとミサはニヤリと笑って
「深追いするなと言っても、あたしもノルマあるからさ、金ない あんたでも呼ばないと苦しいんだよ」
「だろうね。俺もわざわざ出て来てるし、ノルマってどれくらい?」
「そんなの言える訳ないじゃんバカ!…でも、フィリピン人よりかは背負ってる物は無いからラクだけど…」
「フィリピーナって色々あるんだろうな」
「そうだよ。アイツらは生まれた環境が違うんだし、それを受け入れる根性ある男じゃないとダメだよ」

フィリピン人は店のノルマ以上に、祖国家族へのノルマが計り知れないのだろう。

ミサはフィリピーナを嫌っているようだけれど全ては根拠ある言動で、私には常に警告をしている様子でした。

そんな事よりスドーって男はどこだ?

【スドー】
「ミサ、スドーってどの人?」

「アキが付いてる男」

店内をぐる~とアキを探した。
四っつ離れた席にアキはいた。
その横にスドー確認!

銀縁眼鏡の50代くらいのオッサン。だけれど、がたい良く、と言うかデブ…腹が出てる。俺の方が全然若くて良いじゃん。
やたら、チャラチャラしたブレスレッドを2つもしてる。やっぱ金なんだな。

そんな思いが廻り、スドーを『ライバル』として見下していました。

「あ~、あの人?今日はなんで(スドーは)来たの?」
「ボスとも仲良いしアキもスドーからの紹介だし。じゃない?」

ふぅ~ん。

「アキと代わってくるよ。アキがこっちに来てあたしがスドーの所に行くから」
「可能なら…」
「どっちにしろ、そう望んでるんでしょ?あたしがあんたを呼んだ事は内緒だよ」

ミサは察していました。

私がスドーに接近するのはこの場では不自然だし、せめてスドーと面識あり今現在会話をしているアキにはマイの情報が入っている筈だ。
 
【マイとスドー】
「タツ!久しぶりだね!」
と、アキは例のごとくその大きな胸を私の腕にスリスリして来ました。

「アキは元気だったの?」
「元気です~!タツは何してた?他の店いってた?あはは」

いつもの調子のアキへマイの事を聞いてみた。

「マイはどうした?あれから連絡ない?」

アキは私の耳元へ直接話して来ました。

「マイのスドーさん来てるよ。マイはいなくなったんだって。だからスドーさんが探しに来てるよ」
「何で?!じゃぁマイはどこに?」
「スドーさんと喧嘩して出ていって、私は連絡知らないから分からない…」

予期せぬ展開になっていた。
マイの情報が欲しかったのは私だけじゃなかったのでした。
そしてマイは更に遠くへ行ってしまった事を察しました。
 
どこで何やってるんだろう?

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 (つづく)

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09*ミサからの電話

【反省】
「今更マイを探してどうなるの?スドーがいるからどうにもならないよね?フィリピーナは金で動くのが殆どだよ、ハウスボトルだけ飲んで帰る男には用ないんじゃない?」

ミサの言った言葉は、さりげなく私に対する批判が含まれていて、重くず~と響いていました。

 

初めてシンフォニックでマイに会った時に5000円貸してくれて、なんて優しい女なんだろうと思った。
上手な日本語で会話もとても楽しかった。

私はまだ若くて他人とは違う『冒険』をしたかっただけなのだろう。
そしてそれを自慢したく自分勝手な感情が独り歩きして、収集付かなくなっていたのです。

 

先日、健が私に見せた『警告文』を肉声にしたのがミサでした。

 

【未練】
シンフォニックへは行かなくなりました。
たまに、アキからおいでよ~と電話があったけど、眠いだの言って断っていたら電話も来なくなりました。

 

健のお見舞いに行っても、その事はいっさい話さなくなり、看護婦談義に付き合うだけ。
癌も小さくなっているとの事、とりあえず安心しました。

 

私はその時、特に気持ちが落ち込んでいた訳ではなかったけど、最後にマイに逢いたかったな~と、微妙なわだかまりは残っていたのでした。

 

※この心境って一方的な恋愛感情だからこそ増幅してしまい、全く新たな『事』が勃発するまでは続くのでしょう。

 

【ミサからの電話】
「暫くこないじゃん。生きてるの?」
名乗りもしないミサからの電話でした。

「ミサ?仕事も忙しくてさ、あまり飲んでる金ない」
「相変わらず金もってないね?」
「うん、だから悪いけど今日も寝るよ」

「久しぶりに呼び出してやろうと思って電話したんだ。スドー来てるよ」

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(つづく)

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08*日本人『ミサ』の存在

【ミサ】

マイがいなくなりシンフォニックへ来店する頻度は減ったものの、アキ始めフィリピン人達と楽しく過ごしたく常連は続いていました。

フィリピン人達も入れ替わりが激しくお互いを覚える暇もないくらいでしが、逆に新鮮さを感じたのも正直な気持ちでした。

 

そして、系列店からサブマネージャー的な立場の『ミサ』と言う日本人女性がやって来たのです。

たまに私の席につくと言葉が通じ合う者同士仲良くはしますが、あまりにもサバサバと素っ気なく、ズバズバ物事を言うので、他のお客さんを怒らせてしまう事も何度か目撃していました。

 

ミサはマイやフィリピン人達の事を良く知っていて、私の自宅電話番号も教えていてたので暇な時の『呼び出し』もありました。

 

【マイの事】

ある日ミサは辞めたフィリピン人の話題を出してきたのです。

「フィリピン人達って直ぐに悲劇のヒロインっぽくなるし、バックレれて他の店に行っちゃうし扱い辛いよ」

 

こんな内部事情を話す事で、歳の近い私には友達感覚のアピールだったのかも知れません。

 

「マイもそんな感じだった?」

「アイツは一番ダメだよ、金持ちの変なオヤジが時々出て来るはワガママな女だし…」

 

変なオヤジと言うのはアキから聞いた『スドー』という男の事だろう。

 

「そのオヤジとは結婚してるの?」

「そんな訳ないじゃん。マイはフィリピンに旦那いるらしいよ、まぁでも日本での旦那って感じでしょ。どーでもいいよ」

 

フィリピンに旦那?

アキからも聞いた…

 

マイはミサに相当嫌われていたのが分かるし、シンフォニックのフィリピン人達もミサのふてぶてしい態度を良くみてはいないだろう。

 

【スドー】

「そのスドーさんは…」

「…たつ、なんでスドーの事知ってるの?」

酔っていた事もあり、アキに口止めされていた事がつい出てしまった。

 

「あっ、なんとなく風の噂で聞いた…」

と、言うしかなかった。

「アキに聞いたんでしょ。アイツもベラベラ喋るデブだから」

「いやいや、ここでフィリピン人達が話してるを聞いただけだよ」

「もういいよ、もう辞めたフィリピン女は知らないし」

 

酔った勢いの『事故』とは言え、アキとの約束を破ってしまった事に負い目を感じてしまったが、ミサは全て知っている様子だったので、どうでも良い事で済ませてくれた。

 

逆に私はミサからもっと聞き出してやろうと話の進め方を変えました。

「ミサ。色々と教えて?マイの事。俺、今日はまだいるし飲みたいの飲んでいいから」

と情報を『買う』事に決めたのです。

遠くからのアキの視線を気にしながら、マイの事を聞き出しました。

 

【マイに対する私の疑問点】

1:フィリピンに旦那はいたけど現在は離婚してるって聞いたけど?

 

2:スドーさんて何者?

 

【マイに対するミサの回答】

1:フィリピンでは法律上離婚はありえない、但し結婚を無効にする裁判を起こす事ができれば可能。それには莫大な金がかかる。

おそらく離婚も金次第。

 

2:スドーは長野県のフィリピン人女性を全国に送り出すブローカー、長野に在住していたマイと東京に来て、マイをシンフォニック系列に紹介した男で、マイを手放す事はしなく、沢山のフィリピン人女性達とも関係を持ち自宅に住まわせる。その為マイとも半同棲なのである。

 

ミサはフィリピン人の事情も詳しく、サブマネージャーに相応しい存在だったのだろう。

 

【ミサの言葉】

「たつ、あんたマイに惚れてんでしょ?やめときなよあんなジャンキー」

「ジャンキーって?」

「ジャンキーだよ、意味知らないの…」

「いや分かるけど、マイが?何で?」

「だから、やめとけって」

 「俺だって、ここの店の女に惚れた訳じゃないけど、ただフィリピン人の事よく知らないから知りたいだけ」

と本心では無いが、カラーが違う事を主張した。

 

ジャンキー【junkie】 

麻薬常用者。転じて、何かに病み付きになっている人。
(※大辞林 第三版の解説)

出典:ジャンキーとは - コトバンク

 

当然の事ながらミサの情報は、アキよりもニュアンスがしっかりと理解できた。

だからと言って、そう簡単にマイへの気持ちが消沈した訳ではなく、最終的には当人と答え合わせをしなければ、納得ができなかったのです。

 

さあ、どうやってマイを探そうか?

 

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(つづく)

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07*フィリピン人との出会いを友達に報告した日

【健】

高校時代からの友人、健(けん)が病気を患って入院していた。

シンフォニックでのマイの一件は忘れられない出来事として健に報告したく、その日もモンブランと中古のゲームボーイソフトを持って病室を訪れたのでした。

何でも話せる仲で、お互いあまり隠し事はしないと言う暗黙のルールさえあったくらいです。

 

マイに向けていた恋愛感情を淡々と話し、結局他に男がいた事。そして流れでアキを泊まらせる事になった事。

闘病中の身にそんな事お構い無しと言うくらい遠慮なく話しました。

健は終始興味深々らしくニヤニヤと頷いていました。

アキとは何も無かったと言っても信じてくれません。

『俺はデブっぽい女が好きなのに、お前ムカつく!』とまで伝えられましたが『退院したら俺も連れてけ!』となり

挙げ句には私の話の仕返しまでして来ました。

『若い看護婦がキワどいスカート履いてて…水色の…』

 

なに?!

 

『きのう検温の時に俺に接近してきて…』と自慢して来たのです。

私はそっちの方が妄想が膨らみ、異常にムカつきました。

こんなヤツの所こなきゃ良かった。

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【病気】

3カ月前、健と酒を飲んでいると「舌が痛い、舌が痛い」と辛そうにしていました。

「早く病院いったら?」と軽い口調で話したものの、まさかこんな事になるなんて…

 

健は診察に行き数日後に入院です。

彼の病は『舌癌(ぜつ・がん)』だったのです。

舌を切り落とす長時間の手術をしました。

 

初めてお見舞いに行った時は、健のその姿に動揺したくらいです。

しゃべる事も食べる事も不自由なった健は、喉に流動食を入れる為の穴が開き、カニューレというパイプが取り付けられ、人造人間のような姿に変身してしまっていたのです。

 


癌を告知されていた健は僅かな可能性を捨てず、生きる事に常に前向きでした。

『言葉は失ってもファックスがあるから連絡はファックスでしてほしい。退院したらまた飲み歩こう』と私に筆談してきました。

 

当時はまだメールやネットが一般的な時代では無なく、文章での早急な伝達は主にファックスでした。

情報がリアルタイムに印刷されてくる事の有難みを感じました。

 

【ノート】

マイの事を話した日の帰り際、健はノートにこう書いて私にみせました。

 

『マイって女いなくなって良かったと言うのはウソだよ。タツは惚れ込んだら痛い目にあうまで退散しない』

 

(つづく)

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06*アキが泊まりに来た

【アキ】

シンフォニック前で、街灯に照らされ仁王立ちしたアキがいました。

そして「たつ、早く家に行こう」

と私の腕を組んで来たのです。

 

アキは仕事柄、私に惚れている素振りをしますが、決して私に対して男としての好意を抱いている訳ではありません。

正直私もそうでした。

更に、安易に男の自宅に泊まらせてほしいと言う発言は、おそらくアキの性格もあったのだと思います。

 

私はいくらフィリピン人だろうと、その気もない女性を泊まらせる事に躊躇していて、どうにかしてアキを帰らせる作戦は無いものかと、模索するくらいだったのです。

マイの事を聞いた直後で、気持ちに余裕もなかった事もあります。

 

【自宅】

アキに腕組みされマンション敷地内に入る時は、誰かに気付かれやしないものかと、冷や汗もでてきました。

 

とりあえずアキを自宅入れては

「なんか飲む?」ってウィスキーの水割りと湿気たカラムーチョ差し出すと、仕事でも散々飲んでいるわりに「gutom na ako (腹へった~)」と、カラムーチョを頬張り水割りをガバって飲んでは、大声でゲラゲラ笑い始めたので、窓開いていないか気になる始末。

 

【マイの事】

アキからの電話では聞き取れず、ニュアンスがイマイチ伝わらなかったマイの事を聞き出しました。

自殺未遂とかマイが病んでいる傾向にある事よりも、旦那だか彼氏だかの存在が一番気になっていたのです。

 

「マイの旦那さんっているの?」

「フィリピンにいるのよ」

「ん?フィリピンにいる?」

「マイが言ってた、でも今はわからない」

「いつの事?」

「日本に来る前。今はフィリピンにはいない…」

「わからないの?それともいないの?」

「あ~、私はマイと友達だから話はしてた、でも前に旦那さんがいて、今はフィリピンのどこへ行った。わからない」

 

ボトルと水と氷はテーブルに用意してたので、アキは仕事のクセで自分と私に水割りを作り続けながら話してくれたけど、やっぱり意味不明だ。

私の憶測では、マイは日本に来る前フィリピンに旦那がいたけど現在は離婚している。

が、正しい見解だろう。

 

その次だ。

 

「じゃあ今マイが住んでいるのはどこ?」

「高円寺のスドーさんの家」

「スドーさんって誰?」

「日本に来て長野から一緒に来たオジサン」

「誰?旦那さんなの?」

「旦那さんじゃないけど、たまに一緒に住んでる」

「じゃあ、結婚してないけど彼氏?」

「あ~、彼氏じゃないけど時々迎えにきてて…」

 

もう朝3:00を過ぎてた

 

「マイはシンフォニックのアパートに住んでたんじゃないの?」

「そうだよ、スドーさんはたまに一緒に住んでるだけだよ」

 

一緒に住んでるだけって、それが気になる所。

「それならスドーさんの所で、たまにじゃなく、ず~と一緒に住めばいいじゃん!」

 

アキの意味不明な説明と、スドーさんに対する嫉妬心でイラっときて、アキに不機嫌な表情を出してしまった。

 

「アハハ!たつ!マイを愛してるの?Mahal Kita?」

 

どこの国の女性でも、この様な男の心境って気が付く物なのでしょう。

 

そしてアキの話の通りだと思います。

マイには半同棲的な存在の男性がいるのは確かで、それに気が付かなかった私は本当にシンフォニックのカモになっていたのでしょうね。

そもそも、そう言う女性に惚れてしまう事自体がご法度なのですから。

 

Mahal Kita(マハル キタ)

愛してる。I Love You。

初めてタガログ語の愛の表現を勉強した瞬間でした。

 

【4:00AM】

マイと色々と話ができ、なんだかスッキリしたような、そうでもないような…

時計を見ると4:00AMです。

後3時間すれば起きる時間で、この時間まで飲み続けた事は朝になってきっと後悔するハメになりそうです。

 

「ねぇアキ。俺もう寝たいんだけれど、アキはどうするの?」

「私はたつが仕事行く時に一緒に出るよ」

「じゃ、いるの?」

「だって、帰る電車ないでしょ?」

「いいけどどうするの?寝るの?」

 

全くアキに対する興味がない事を露骨に冷たく表しました。

あまりタイプでもないし、アキに性的な気持ちは持ち合わせないようにしよう。

だってマイへの純粋な恋愛感情を、貫きたかったのですから。

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「じゃあ、たつの布団で寝ていいでしょ?」

「へっ?一緒に?」

「ダメなの?」

 

この時のアキの言葉は、単純に就寝する事だけを要求していた様子です。

 

「わかった。けど、そのままの恰好でねるの?」

「だいじょうぶ」

 

そしてアキと同じ布団で、背中合わせで、短い睡眠を取ったのでした。

アキのサイズからして私の就寝キャパシティーが狭くなった事は言うまでもなく、胸の大きさ同様、ケツの大きさも強烈なのが分かりました。

 

もしこの時、本能に任せアキに迫まったり、迫られたりしていたら、今の私の人生も変わっていたかも知れない。

 

(つづく)

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